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「食で読み解くヨーロッパ」 [食事]

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  朝倉書店、2019年4月刊。
  著者は、加賀美雅弘さん。

1 ヨーロッパの食料
 ヨーロッパの食料は、もともと貧弱だった。
 ヨーロッパ原産のものは少なく、地中海地方原産のエンドウ、キャベツ、パセリ、カリフラワー、アスパラガスなどがあるぐらいである。
 ヨーロッパの食は、他の地域からもたらされた様々な農産物により豊かになった。
 
 まず古代に、メソポタミア地方から麦、玉ねぎ、ほうれんそう、ブドウなどが伝わった。
 その後、16世紀になってアメリカ新大陸から、とうもろこし、ジャガイモ、トマト、トウガラシなどが持ち込まれた。
 これらの農産物は、ヨーロッパの自然環境でも栽培可能であったことから、大量に生産され、人々の重要な食料となった。

2 油脂
 ヨーロッパの料理に油脂は欠かせない。
 地中海沿岸地方では、パスタ料理、肉料理、サラダなど多くの料理にオリーブ油が使われる。
 北西ヨーロッパでは、バターの使用量が多くなる。
 一方、東ヨーロッパでは、ブタの脂であるラードが使われる。
 ハンガリーの代表的なシチューであるグヤーシュや、ウクライナの伝統料理であるボルシチは、かなり多めのラードを使った煮込み料理である。

3 砂糖
 砂糖は初めサトウキビから作られた。
 サトウキビの原産地は東南アジアのニューギニア。
 それが、インドや中東を経由して8世紀ごろにヨーロッパに伝わった。
 しかし、ヨーロッパでサトウキビを生産するのは難しく、本格的に砂糖が消費されるようになったのは、アメリカ新大陸でサトウキビの栽培が行われるようになってから。
 カリブ海の島々で、アフリカからの黒人奴隷を使ったサトウキビのプランテーションをイギリス人が展開した。
 砂糖はヨーロッパで人気が高く、高価で取引され、イギリスに莫大な利益をもたらした。
 砂糖を使用したスイーツは、貴族や都市市民の間でもてはやされた。

 18世紀から19世紀にかけての時期にドイツの科学者が、それまで豚の飼料として栽培されていたテンサイの根から砂糖を抽出することに成功した。
 ヨーロッパではこの方法による砂糖生産が急増し、砂糖の価格が大幅に下がり、一般市民の間でも広く利用されるようになった。
 食後に食べるデザートの習慣は、こうして次第に定着していった。
 
4 ミネラルウォーター
 18世紀、ヨーロッパの保養地では飲泉の習慣が広まり、鉱物質に富む鉱泉、すなわちミネラルウォーターを飲むことによる病気の治療が行われた。
 中でも二酸化炭素を含む火成岩から湧き出る炭酸泉は身体によいと言われ、人気が高かった。
 しかし、保養地に滞在することができる人は限られ、また、それらを瓶詰にしたものは大変高価であった。

 そうした中、ドイツの医師が炭酸泉のミネラル成分を科学的に調合し、さらに炭酸を吹き込むことにより、人工的に炭酸泉を製造し、1821年に販売を始めた。
 この人工ミネラルウォーターは好評であったが、第二次大戦後に、天然でないミネラルウォーターの販売が法律で禁止されたため、1960年代に販売終了となった。

 こうした経緯から、ヨーロッパではミネラルウォーターと言えば、炭酸水が定番となっている。
 
5 ビール
 ビールは基本的には大麦とホップから作られる。
 大麦は、メソポタミア原産で、アルプス以北の地域で栽培されるようになった。 
 しかし、大麦は小麦やライ麦と違ってグルテンを含まず、パンには向かなかった。
 もっぱら家畜の飼料として栽培されていたが、古くから麦芽を発酵させて造る、栄養価の高い飲み物としても利用されてきた。
 この頃のビールは、常温で発酵し、比較的強い香りが特徴の上面発酵ビールであった。
 現在でも、イギリスのエールがこの種のビールである。
 
 一方、15世紀に南ドイツで下面発酵ビールが開発された。
 現在、ラガーと呼ばれるタイプのビールで、低温で緩やかに発酵し、香りが弱く、すっきりとした味わいである。
 ドイツでは、現在でもビールは大麦とホップからだけで作るよう法律で決められている。
 
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