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「アイヌ文化を読み解く『ゴールデンカムイ』」 [文化]

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  集英社新書、2019年3月刊。
  著者は、アイヌ文化研究家の中川裕さん。

 著者は、漫画「ゴールデンカムイ」のアイヌ語監修者。
 「ゴールデンカムイ」を通して、アイヌ文化を紹介する。

1 カムイ
 カムイとは、人間を取り巻いていて、人間に役に立っている自然物並びに人工物のすべてを指し、それらのものに魂が宿っていると考える。
 アイヌ(人間を指す)とカムイが良い関係を結ぶことによって、お互いに幸福な生活が保たれる。
 カムイたちは「カムイの世界」から、人間へのお土産を持って「人間の世界」にやってくる。  クマのカムイは人間に毛皮と肉をもたらす。
 樹木のカムイは樹皮や木材をもたらすなど。
 人間はカムイからの恩恵を感謝して受け取り、それらを余さず利用し、また、不必要にとりすぎたりはしない。

2 イオマンテ
 クマの巣穴で見つけた子グマを家に連れて帰り、1~2年育てた後、「カムイの世界」に先に戻っている親元に魂を送り返す儀式。
(親グマは、人間に殺され利用された後、感謝の祈りをささげてもらい魂は「カムイの世界」に戻っている)
 イオマンテの儀式には大勢の人が集まり、子グマを解体して、その肉を皆で食べる。
 それにより、子グマの魂が親元に送り返され、クマたちがふたたび人間世界にやってくることを祈願する。

 アイヌの思想では霊魂は不滅であり、霊魂の世界とこの世を循環している。

3 名前のつけ方
 アイヌの人たちの名前の付け方には、以下のようなルールがある。
 ① 亡くなった人も含め、自分たちが知っている人たちと同じ名前をつけてはいけない。
  (恩恵も災いも、名前によって届けられるので)

 ② 生まれてからすぐには名前をつけず、6~7歳ごろになって、その子の性格や、その子に関係した出来事にちなんでつけられる。
   それまでは「シタクタク(うんこのかたまり)」などというような汚い名前で呼ばれる。
   これは、子どもたちの魂を取っていくようなものが近づいてこないように願うため。

4 カムイへの祈り
 イオマンテなどの儀式あるいは山に狩りに行ったときなどでは、男性がカムイに祈りの言葉を捧げる。
 祈りは、相手のカムイや、その場の状況に合わせて即興で唱えていく。
 言葉の力とともに経験が必要となる。
 男性であれば誰でもお祈りができなければいけない。
 
5 口承文芸
 アイヌの人たちは文字を持たず、多くの物語を口承で伝えてきた。
 その記憶力は、大変優れている。
 物語は、アイヌの自然観・世界観をうかがわせるもの、奇想天外な冒険談、かわいらしい話など様々である。

 また、実に多彩な歌も伝承されている。
 歌は、以下のような様々な形式がある。
  ・交唱 (一人が音頭をとって、それをみんなで繰り返す)
  ・斉唱 (一緒に声を合わせて歌う)
  ・輪唱 (いろいろな曲を続けて歌っていく)

6 アイヌの食生活
  肉、魚、山菜などを入れて煮込んだ鍋物が中心だった。
  味付けはごく少量の塩だけである。
  肉や魚などは、乾燥させて燻製にして保存する。
  肉は、シカやクマだけではなく、キツネ、タヌキ、ウサギ、リスなども食べていた。

  クマは、内臓や脳みそは生で食べるが、肉は寄生虫がいるので絶対に生では食べない。
  サケの身も、アニサキスが寄生していることがあり、生では食べない。
  
7 アイヌ語
 日本語とアイヌ語は全く違う言語。
 アイヌ語は、世界に親戚と呼べる言語は一つもない「孤立言語」である(日本語や韓国語も同じ孤立言語)。
 アイヌ語が日本語に使われている例もある。
 例えば・・
  「コンブ」、「ラッコ」、「トナカイ」、「オットセイ」など。

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